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響きの風景〜エストニア室内音楽の夕べ




「響きの風景〜エストニア室内音楽の夕べ」を無事終えることができま
した。たくさんの温かいご支援に心より厚く御礼申し上げます。

秋場敬浩君とともに、エストニアの音楽と真剣に取り組んで10年。
知られざる作品の発掘とその初演には楽しみと苦労と両方同じくらいの積
み重ねがありました。今回の演奏も大半が日本初演となりましたが、私の
演奏した曲も音源なし、楽譜は手書きであったり・・特に「エストニアの
風景」(ポルドマエ作曲)という作品は、風景の地名がすべて知らない場
所。今はインターネットで何でも調べられるので、その場所の写真はゲッ
トできましたが、それと音楽を結びつけるものは想像力と感じる心でしか
ありません。でも時間をかけて音楽を心に刻んでいくにつれ、目で見る風
景より深い印象が得られたかもしれません。井上さんに歌っていただいた
トゥビンの歌曲はどの曲も情景を描写する詩が繊細で、それがエストニア
の風景なのか、トゥビンの人生を比喩するものなのか・・とにかく美しい
詩で、伴奏も歌詞に寄り添い、光と影を受け持って本当によく出来ている
と思いました。齋藤さんのヴァイオリンによるアルヴォ・ペルト作曲「鏡
の中の鏡」の10分間は、弾いているとどんどん過去にさかのぼって、二度
と会うことができなくなってしまった人と再会できたような境地にも至り
ました。井上さん、齋藤さん、素晴らしい演奏を本当にありがとうござい
ました。

エストニアのタサ大使は、これから10年、20年と活動を続けるようにと
お話しになりましたが・・・ 今の私がその気になるにはかなりのエネルギ
ーが必要です。でもこんな私の努力でもご期待に添えるならば、また頑張
りたいと思っております。










お待ち申し上げております





5月9日(金)「響きの風景〜エストニア室内音楽の夕べ」が明日に迫り
ました。
曲目解説は私の独奏曲に関して・・で終わってしまいましたが、どうか
お許し下さい。(体調を整えるのに、ここへ来てとても苦労しており
ます。)

明日、お配りするプログラムには、駐日エストニア共和国大使、日本・
エストニア友好協会会長、エストニア音楽情報センター所長 各氏より
エストニアン・ミュージック・プロジェクト結成10周年へのお言葉を
頂戴しているほか、曲目解説も例年に劣らず、充実した内容となって
おります。

明日は、これまでエストニア音楽とともに歩んできた10年という月日の
ことを思い、エストニアをより近くに感じる一日にしたいと願っており
ます。日本初演となる曲も多く、エストニア音楽をピアノ、ヴァイオ
リン、声楽(バリトン)の多彩な演奏で、お楽しみ頂きたいと思います。

この夏は、昨年果たせなかったエストニアでの演奏を実現させていただ
けることになり、明日は私にとって、それに向けた重要な第一歩でもあり
ます。

明日の当日券はまだございます。
ぜひご来場くださいますようお願い致します。

心よりお待ち申し上げております。







4つのエストニアの風景(2)

アロ・ポルドマエ作曲の《4つのエストニアの風景》に取り上げられている
実際の風景を探してみました。

1. 氷に閉ざされたケイラ・ジョアの滝



ケイラ・ジョアの滝は、エストニア北部のケイラ川にあり、エストニアでは
3番目に大きな滝。高さ6m、幅70m。



ポルドマエ氏は、凍りついた滝の迫力ある造形、氷に反射する光などを独特
なハーモニーで描いています。凍りついた滝からは、水流の音は聞こえない
けれども、水流があるときには聞こえなかった音が聞こえるかもしれないし、
動きが止まった世界を見るのはとても神秘的で、彼はそうした風景に強い霊
感を受けたのではないかと思います。

参照サイト→こちら



2. ヴォーレマー地方



ヴォーレマー Vooremaa とは「多くの丘を有する風景」の意。人類未踏の
森が点在し、世界的にも重要な湿地帯を保有する自然保護区です。鹿、熊、
狐、オオヤマネコなどの野生動物も数多く生息しているそうです。

ポルドマエ氏のこの作品は、広大な景色をのびやかな旋律で表しつつ、
見えないけれど、どこかに潜んでいる生命(動物たち)を慈しむ気持ちに
溢れています。ある表現には、大自然の厳しい現実にもしっかり目を向け
ているように感じられる部分もあります。

参照サイト→こちら



3. ヴァルスカの砂丘



ヴァルスカの町はエストニアの南東に位置するプスコフ湖近くにあり、
ミネラルウォーター Värska でも知られています。ポルドマエ氏による
と、森の周囲 1キロにわたって、砂丘が広がっているといいます。

曲の冒頭は全4曲中、もっとも静寂、そしてシンプル。どこか懐かしい
子守歌のような旋律は何度も繰り返されます。途中、2度にわたって
衝撃的なアクセントが繰り返される部分があるが、砂丘の刻々と変わる、
波打つような砂地の造形なのかな・・と私は想像して弾いています。

参照サイト→こちら



4. リストナの打ち寄せる波



リストナ というところは、バルト海に浮かぶヒーウマー島の最西端に
あり、スウェーデンのストックホルムはその沖、西へ200キロとのこと。
エストニア唯一の大防波堤があり、サーフィンやヨットを楽しむ人々で
にぎわう場所です。

次々に打ち寄せる波の様子が、即興的に音とリズムで表現されています。
海の波の音というより、動きや太陽の光や風の向きによって変化する色、
入り組んだ岩に当たって砕ける水しぶき、あるいはサーフィンやヨット
がそうした波に乗っている様子を表現しているように感じます。最後は
夕日が海に沈み、やがて星空が広がり、波の音だけが聞こえる・・私の
イメージです。

参照サイト→こちら



響きの風景〜エストニア室内音楽の夕べ
5月9日(金)19:00開演
五反田文化センター音楽ホール

チケットお申込み:estonianmusicjapan@gmail.com





4つのエストニアの風景(1)

私が演奏するもう一つの独奏曲は、アロ・ポルドマエ作曲の
《4つのエストニアの風景》です。
ポルドマエ氏は1945年生まれ。タルトゥ音楽院、タリン音楽院
に学び、2009年からはタルトゥの母校にて、トゥヌ・クルヴィ
ッツやマリ・ヴィーマントなど、現在、著名な作曲家として活躍
する教え子を輩出。また、ヘイノ・エッレルの弟子の一人として
彼の音楽遺産の研究と紹介、維持管理に貢献し、同じく2009年
にヘイノ・エッレル賞を受賞、また同年、エストニア・ピアノ
博物館を設立されました。
こうして見ると、2009年という年は彼にとって特別な年のよう
ですね。
《4つのエストニアの風景》もなんと、その2009年の曲!
使用している楽譜は手書きのもので、まるで出来たてほやほやの
ようでしょう?


写真


これは一曲目です。不鮮明なところがあったので、ポルドマエ氏に
メールで質問させていただいたところ、とても丁寧にお返事くださ
いました。今回、日本初演できることが楽しみです。
以下が全4曲のタイトルです。


組曲《4つのエストニアの風景》(2009)
 1. 氷に閉ざされたケイラ・ジョアの滝
 2. ヴォーレマー地方
 3. ヴァルスカの砂丘
 4. リストナの打ち寄せる波

私にとって、カタカナの地名のどの場所もなじみがないのですが、
ポルドマエ氏にとって、どれも思い出深い場所なのだそうです。
この組曲は現在も作曲が進行中で、最終的には《12のエストニアの
風景》となるとのことです。
どれも短い曲で、風景を短歌に詠んだような作品とでもいうべきか、
あるいは水彩画の軽やかなスケッチとでもいうべきでしょうか。
今回のEMPコンサートのタイトル「響きの風景」にぴったりな作品
です。

4つの場所については写真を集めたので、次回ブログにて、見ていた
だきたいと思います。お楽しみに〜







カドリオルグの春〜歌の祭典



タリンの郊外に位置する「カドリオルグ公園」の写真です。

カドリオルグは、ロシアのピョートル大帝がエカテリーナ妃のために
造らせた公園で、エカテリーナに対応する女性の名を使い、“カドリの
谷” と呼んだのが名前の由来。写真の離宮は1718年から5年をかけて
建設された後期バロック様式の宮殿です。建物の色合いと敷地やお花
の色がとても美しく調和していますね。

ここは冬、雪に覆われますが、春の公園の緑地には、春の訪れを喜び
合う人々が憩うとなるとのこと。
E. カップ作曲の〈カドリオルグの春〉は、そんな春の麗らかさ、人々
の安らぎの時間を、親しみやすい旋律と深みのあるベースラインで
表現しています。最後にはカッコウの鳴く声が聞こえて来るでしょう。
こちらのサイトも→是非ご覧下さい!


カドリオルグ公園に隣接するところに、巨大な野外劇場「歌の原」が
あります。

800px-XXV_üldlaulupidu

この写真は、そこで開催される「歌の祭典」の様子です。
100年以上前から5年に一度開催される「歌の祭典」ですが、今年
2014年はその開催年となります。

この合唱際で必ず歌われるのは、Mu isamaa on minu arm(我が
祖国、我が愛)」。エストニアで第二の国歌として親しまれていま
す。歌詞は→こちらをご覧下さい




1988年9月、エストニア各地から30万人がここに集って独立への
思いを歌い、「歌う革命」を起こしました。
E. カップは〈歌の祭典〉で、このことを思い起こして作曲したこと
は間違いないでしょう。アカペラによる歌声の掛け合いシーンを
挟みつつ、祖国を愛する気持ちで一つになっていく大合唱をピアノ
ソロで表現しています。

以上で E.カップ作曲《タリンの絵》についての解説を終えたいと
思います。もう一曲、〈リレー競争〉という面白い曲がありますが、
当日のプログラムをご参考に、楽しんでいただけたらと思います。


のっぽのヘルマン

E・カップ:《タリンの絵》より
Pictures from Tallinn for piano solo (1949)
 カドリオルグの春
 リレー競走
 のっぽのヘルマン
 オオカミ谷の渓流
 歌の祭典


前回は〈オオカミ谷の渓流〉について書きました。

今日は〈のっぽのヘルマン〉についてです。

エストニアの首都タリン Tallinn の旧市街(世界遺産に登録されています)
は、かつて支配者たちが居を構えた山の手(トーンペア)と、商人や職人
たちが築き上げた下町とに分かれています。山の手にあるトーンペア城に
は、15世紀当時の姿を留める3つの塔があり、南側の50.2mの塔は “のっ
ぽのヘルマン” の愛称で親しまれています。



写真中央の塔が “のっぽのヘルマン”
ピンク色の建物は「トーンペア城 Toompea」で、現在は国会議事堂と
なっています。
(撮影:2005年/by Yuko Yoshioka)






塔の上にはそれぞれの時代の支配者の旗が掲げられましたが、現在はエスト
ニア国旗が掲げられています。毎日、日の出とともにエストニアの国旗が
国歌の調べに合わせて、この写真のように塔の上に掲揚されるとか。
エストニアの三色旗は、青はエストニアの空・湖・海、希望・友情・団結を、
黒は大地、悲しい歴史を、白は雪、人々の幸福を表します。


EESTI.jpg


E.カップ作曲のこの作品は、「黒」の大地と過酷な歴史を表現するような
重々しい曲想に始まり、途中、雪の風景を思わせるようなスタッカートで
刻むフレーズがあり、最後は希望に満ち、エストニアの青く高い空に、の
っぽのヘルマンが突き抜けるような、威厳ある締めくくりとなっています。





オオカミ谷の渓流

エストニアの作曲家 Eugen Kapp のピアノ曲集《タリンの絵》
(1949)について、ご紹介します。

ERES2871.jpg

この美しい楽譜に収められている全10曲中、私が5/9に演奏する
のは5曲ですが、今日から順不同で1、2曲ずつ、取り上げてみよう
と思います。
順不同で・・というのも、曲について調べていて、なんて面白い!
と思ったことが今日あったものですから、この曲から書くことに
しました。

《タリンの絵》は、エストニアの首都タリンの風景を音で描いた
ような作品で、具体的な場所や建物の呼び名がタイトルになってい
る曲もあります。
その中で、“オオカミ谷の渓流” と題する曲は一番気になって
いました。

「オオカミ谷」はどこにあるのか?
なぜ、オオカミ谷とよばれるのか?

場所はすぐにわかったものの、名前の由来はなかなかわからず、
あきらめかけていたところ、もう一押し、エストニア語のウェブ
サイトを追究してみたら、答えが!

オオカミ谷(エストニア語:Hundikurislik)と名付けられたきっ
かけは、19世紀終わりごろ、タリンでウェーバーのオペラ「魔弾の
射手」が人気だったことにありました。オペラに「オオカミ谷」が
出てくるのです。
ウェーバーは、ドイツのハイデルベルクの東約40キロに位置する
ツヴィンゲンベルク Zwingenberg 近くにある通称 “オオカミ谷”
Wolfsschluch で、インスピレーションを得たのだそうです。




上の写真は、タリン郊外のカドリオルグ公園の東のはずれにある
“オオカミ谷” 。下の写真はドイツの “オオカミ谷” です。
《魔弾の射手》が人気だったから命名したというのは面白いですが、
岩肌の感じなど、どことなく似ていますね。




こんな話がわかるまでは、昔はオオカミが出たのかしら・・?
と想像するくらいで(曲中、オオカミが吠えるような音使いもある
し・・)、まさか《魔弾の射手》が出てくるとは思わなかったので
今夜は楽しく、プログラムノート原稿書きの疲れも吹っ飛びました
(笑)




響きの風景〜エストニア室内音楽の夕べ

ブログ更新が滞り、すみません。。
日々のことで体力的に精一杯でした。

ゴールデンウィーク返上で、準備、練習にがんばります。
お申し込みお待ちしております。


ESTONIAN MUSIC PROJECT Vol.5
響きの風景〜エストニア室内音楽の夕べ
エストニアン・ミュージック・プロジェクト結成10周年記念

2014年5月9日(金)19時開演
五反田文化センター 音楽ホール

【出演】
 秋場敬浩(ピアノ)
 吉岡裕子(ピアノ)
 井上雅人(バリトン)
 斎藤澪緒(ヴァイオリン)




【プログラム】

E・カップ:《タリンの絵》より
Pictures from Tallinn for piano solo (1949)
 カドリオルグの春
 リレー競走
 のっぽのヘルマン
 オオカミ谷の渓流
 歌の祭典


H・エッレル:《鐘》
The Bells for piano solo (1929)


E・トゥビン:歌曲
3 Songs for baritone and piano
Su õrna kätt あなたの優しい手 ETW68 (1926)
Lumehelbeke 雪片 ETW82 (1949)
Kesk laotusi 天空にて ETW73 (1927/65)


E・オヤ:ヴァイオリンとピアノのための組曲《アエリータ》
"Aelita" suite for violin and piano (1932)

 ☆☆☆

A・ぺルト:《鏡の中の鏡》
Spiegel im Spiegel for violin and piano (1978)


T・クルヴィッツ:《シェークスピアによる3つのソネット》
3 Shakespeare' sonnets for baritone and piano (1998)


A・ポルドマエ:《4つのエストニアの風景》
4 Estonian Landscapes for piano solo (2009)
 1. 氷に閉ざされたケイラ=ジョアの滝
 2. ヴォーレマー地方
 3. ヴァルスカの砂丘
 4. リストナの打ち寄せる波


U・シサスク:《銀河巡礼~南半球の星空》Op.52 より
3 pieces from "Southern Starry Skies" for piano solo (1995)
 さいだん座 ー 増殖
 かじき座 ー 霧の中の悦び
 とけい座 ー 伸展
 レチクル座 ー 永遠


_______________________________

私は2つのソロ曲「タリンの絵」、「エストニアの風景」の演奏と
トゥビンの歌曲(バリトン)とペルトの「鏡の中の鏡」
(ヴァイオリン)の伴奏をします。(紫の文字)





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