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リピンスキのストラディヴァリウス


パガニーニ(1782-1840)以降、最も天才的なヴァイオリニストという
とサラサーテ(1844-1908)、といわれることが多いが、その前に・・
ポーランドのヴィエニアフスキ(1835-80)が入るのではないかと思う。

そのヴィエニアフスキが、自身の代表作である “華麗なるポロネーズ
Op.4” を献呈した天才ヴァイオリニストがいる。
それはもう一人のポーランドのヴァイオリニスト(兼 作曲家)

カロル・ユゼフ・リピンスキ
Karol Józef Lipiński(1790-1861)

225px-Karol_Lipi?ski.PNG

彼はなんと、パガニーニのライバルだった。
そして、19歳のショパンはワルシャワで彼らの演奏を聴いている。
このことについてはまた改めて書きたいと思う。


今日はヴァイオリンのことについて。

リピンスキが使用していたストラディヴァリウスは今も使われていること
がわかったのである。
ヴァイオリンという楽器はピアノに比べてその寿命は果てしなく!
ピアニストにとってみればうらやましい限り。

ヴァイオリンのことをもう一つわかっていなかった私は今になって
知れば知るほどその魅力に取り憑かれている。
ヴァイオリンには以下のような優れた楽器がある。( )内はその製作
者の名前である。何百年も昔の歴史的な銘器が現在も実際に使われ
ているのである。
(A.ストラディヴァリはN.アマティの弟子)

アマティ(Niccolo Amati 1596-1684)

ストラディヴァリウス(Antonio Stradivari 1644-1737)

グァルネリ・デル・ジャス(Bartolomeo Giuseppe Antonio Guarneri
             1698-1744)




リピンスキはストラディヴァリウスとグァルネリを使っていた。
それもパガニーニが使っていた楽器より古いものである。

グァルネリの方は1737年製で、Mr. Alfred San Malo所有の ex Lipinski
とある。
Guarneri

ストラディヴァリウスは1715年製。
現在Milwaukee Symphony Orchestraのコンサートマスター Frank
Almondさんが使っている。
Stradivarius

Frank Almondさんのサイトを見つけた。この1715年製のストラディヴァリ
ウスはリピンスキ所有の前に、タルティーニ(Giuseppe Tartini 1692-
1770)のものだったようだ。(タルティーニはイタリアの作曲家、ヴァイオ
リニスト。「悪魔のトリル」の作品で有名。)


Frank Almondさんの リピンスキ・ストラディヴァリウス

楽器の写真があり感動!どんな音がするのだろうか。



リピンスキの作品より1曲(演奏者不明)




リピンスキ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 より 第2楽章
Violin Concerto No. 2 'Concerto militaire' Op. 21, (1826), ca 30'





ノクターン 嬰ハ短調 遺作(ミルシテイン編曲)





ショパン:ノクターン 嬰ハ短調 遺作(ナタン・ミルシテイン編曲)
Nocturne cis-moll Posthumous Transcribed by Nathan Milstein


演奏:アーロン・ローザンド Aaron Rosand(ヴァイオリン)


ローザンド(1927-)はアメリカのヴァイオリニストだが、父はポーランド系、
母はロシア系。
レオポルド・アウアーの弟子、エフレム・ジンバリストに師事。

ショパンの作品をヴァイオリンに編曲したものは思いのほか多数あるが、
このミルシテイン編曲のノクターン 嬰ハ短調 遺作は最も演奏される曲
である。
ミルシテインもレオポルド・アウアーの弟子。ミルシテインは私が最も好き
なヴァイオリニストの一人で、特にピアニスト、ホロヴィッツとのブラーム
スのヴァイオリン・ソナタ 第3番の名演は何度聴いても感銘を受ける。
ホロヴィッツとは意気投合できる共演者として、演奏旅行もしたという。
生演奏はどんなに素晴らしかったろうか!

このショパン=ミルシテインのノクターンを演奏しているヴァイオリニスト
は沢山いて、パールマンや五嶋みどりなどもYou Tubeで聴いたが、このロ
ーザンドの演奏はなぜか一番私の心深くに響くものだった。

2008年の演奏・・ということは・・ローザンドさんは81歳である。



そうこうしていたら、ミルシテインによる演奏も見つけてしまった!




ローザンドさんの方が温かみを感じる・・と言いたいが
ミルシテインの凛としたまっすぐな音はショパンの心情が心に刺さるように
感じられ・・

大いに刺激を受けました。この印象を忘れず、ショパンへの思いを深めたい
です。



ポーランドのヴァイオリニスト


ポーランドのヴァイオリニストをたどっていたら、数々の名演奏家を
世に送り出した二人のヴァイオリン指導者が浮かびあがった。

レオポルト・アウアー Leopold Auer(1845-1930)

カール・フレッシュ Carl Flesch(1873-1944)

二人ともハンガリー出身のユダヤ系ヴァイオリニストである。
彼らに指導を受けた門下生は次の通り。
☆マークはポーランド人。


カール・フレッシュ門下
シモン・ゴールドベルク(1909-93)☆
グラジナ・バツェヴィチ(1909-69)☆
ヨーゼフ・ハシッド(1923-50)☆
イダ・ヘンデル(1928- )☆


レオポルト・アウアー門下
エミル・ムウィナルスキ(1870-1935)☆
エフレム・ジンバリスト(1889-1985)
サミュエル・ドュシュキン(1891-1976)☆
ミッシャ・エルマン(1891-1967)
ヤッシャ・ハイフェッツ(1901-87)
ナタン・ミルシテイン(1903-92)


ポーランドの偉大なるヴァイオリニストといえば
ヘンリク・ヴィエニアフスキ
Henryk Wieniawski
(1835-80)

であるが、彼の師匠は
ヨーゼフ・マサール(Joseph Massart ベルギー1811-92)である。

マサールの弟子には
フリッツ・クライスラー(1875-1962)もいる。
クライスラーとヴィエニアフスキが同門だったとは!

マサールの師匠はクロイツェル。
ベートーヴェンがかの有名なヴァイオリン・ソナタを捧げた、あの
クロイツェルである。

レオポルト・アウアーの師匠はヨーゼフ・ヨアヒム(1831-1907)。
ヨアヒムの師はメンデルスゾーンである。
ヨアヒムはポーランドのピアニスト、アルトゥール・ルービンシュ
タインの才能を見いだした人でもある。

この興味深い系譜、個人個人のヴァイオリニストについて、交友関
係などについて、知らなかったことはきりなくあって、これから少
しずつまとめてみたい。



神話 Myty





シマノフスキ:神話(ヴァイオリンとピアノのための3つの音楽詩)
Myths, Three Poems Op. 30 for Violin and Piano (1915), ca 21'30''

1. アレトゥーザの泉 The Fountain of Arethusa
2. ナルキッソス Narcissus
3. ドリュアスとパン Dryads and Pan


演奏
Violin: カヤ・ダンチョフスカ Kaja Danczowska
Piano: クリスティアン・ツィメルマン Krystian Zimerman



シマノフスキの作品で

メトープ Metopy Op.29
神話 Mity Op.30
仮面劇(マスク)Maski Op.34

は「シマノフスキの三大M」と呼ばれる。ピアノ曲「メトープ」は「神話」の
姉妹作で、古代ギリシャの題材に基づいて作曲された。(メトープとは、ギリ
シャの神殿建築の柱の上に彫刻された部分のこと)ピアノ曲「仮面劇」と「メ
トープ」はドビュッシー、ラヴェルへのオマージュとも言われる作品。

「神話」はポーランドのヴァイオリニスト、コハンスキの助言を受けながら
完成した。

ヴァイオリニスト五嶋みどりさんのサイトに詳しい解説がある。
五嶋みどり公式サイト
みどり通信/作品解説



この夏(8月~9月)に八ヶ岳高原音楽堂にて全3曲を演奏予定。
八ヶ岳高原音楽堂 四季の音楽会2010




ザレンプスキ Zarębski


ユリウシ・ザレンプスキ Juliusz Zarębski (1854-85)

ショパン亡き後、5年後にウクライナ西部のŻytomierz(ジトミェシュ)
に生まれる。(ピアニスト、スヴャトスラフ・リヒテルもここで生まれたよ
うだ。)

ポーランドのピアニスト、作曲家。
ピアノをウィーン、サンクトペテルブルク、ローマにて学ぶ。ヴァイマール
とブダペストではフランツ・リストに作曲の指導を受けた。(リストは彼を
高く評価、ザレンプスキの作品のほとんどはリストの尽力により彼の生存中
に出版することができたという。)
その後、ヨーロッパ各地でコンサート活動をし、名声を得る。
ブリュッセル王立音楽院教授も務めた。
多忙な演奏活動中に結核にかかり、31歳の若さで命を落とした。

作品はショパンのようにほとんどピアノ曲ばかり。
唯一のピアノ五重奏曲はポーランドの19世紀後半における室内楽曲の中でも
際立つ天才的な作品の一つという。

ザレンプスキと同時代の作曲家には次のような人物がいる。

ヤナーチェク(1854-1928)同い年
モシュコフスキ(1854-1925)同い年
エルガー(1857-1934)
マーラー(1860-1911)
パデレフスキ(1860-1941)





ピアノ五重奏曲 ト短調 作品34
Piano Quintet in G minor Op. 34 for Piano and String Quartet, (1885), ca 36'

ザレンプスキ最後の作品。亡くなる年に書かれている。31歳いう若さで書い
た曲とは思えない充実した作品で、レパートリーにしてみたいという気持ち
が湧いてくる。
PWMより楽譜出版されている。You Tubeでの演奏者の記載なし。この肖像画
はザレンプスキ唯一のものと思われる。



先日、ザレンプスキの曲を弾いた。子守歌 Kołysanka(コウィサンカ)。
もともとはピアノ独奏曲だが、ヴァイオリンとピアノのために作曲者自身が
編曲している。どちらの楽譜も入手したが、ヴァイオリンとの方が美しい?
このことについてはまた改めて触れたいと思う。


PWM(ペー・ヴェー・エム)


PWM(ペー・ヴェー・エム)ポーランド音楽出版社

POLSKIE(ポーランドの)
WYDAWNICTWO(出版社)
MUZYCZNE(音楽の)

はポーランドで最も大きい、60年以上の歴史をもつ楽譜出版社。
本店はKraków クラクフ にある。




出版社としての最も重要な点は、ポーランドの代表的作曲家

Chopin(ショパン)
Moniuszko(モニュシュコ)
Karłowicz(カルウォヴィチ)
Szymanowski(シマノフスキ)

の全作品を備えていることだそうだ。


私はたまにPWMのサイトから直接、楽譜を注文することがあるが
2、3週間で送られてくる。
今、ユーロが毎日びっくりするほど下がっているからお買い得かも!


サイト内のComposers'gallery のページは実に美しく、よく整理されて
いる。
作曲家の貴重な写真と簡潔なプロフィール、そして楽譜の一覧がわかり
やすくまとめられている。

たとえば Bacewicz バツェヴィチという作曲家を頭文字のインデックス
から探して開くと

biography
list of works PWM
discography
bibliography
concerts

といった項目を見ることができる。 →こちらをクリック


またブックショップのページでは、書物の一覧も見ることができる。
最近目に留ったのは、シマノフスキが著した「ショパン」という本。
残念ながらポーランド語しかないが(早く英訳が出ないかな~~)
でも、そのような貴重な本が存在することをチェックできたことは
収穫!


まだまだ発見のありそうなサイトだ。

PWMのサイト

英語で見たい場合は右上のイギリスの旗をクリック。


追悼


Kaczynski Lech and Maria


4月10日のポーランド大統領夫妻を乗せた飛行機墜落事故から
ポーランドはどんな様子なのか気になって、ニュースを見て
みましたら、今日18日は大統領の国葬が営まれた日からちょうど
一ヶ月であることがわかりました。

悲しみに暮れる国民の写真に胸が痛みました。



カチンスキ大統領は、「日本におけるショパン生誕200年祭」の
名誉総裁でもあり、ラ・フォル・ジュルネで配られていたパンフ
レットに大統領の挨拶文が綴られていたのを読み、辛くなりました。

ショパン生誕200年に向けてさまざまな努力がなされてきたことは
ポーランドの充実した数々のサイトを見てもわかります。
このブログはそうしたサイト内探索から発見したことを取り上げたい
と思った・・というきっかけもあります。

大統領の無念さ・・ショパンも天国で悲しんでいると思います。

改めて心より冥福を祈ります。


ポーランド大使館
Polish Music Center


レゲンダ(伝説曲)Legenda







ヴィエニアフスキ:レゲンダ Legenda Op.17(伝説曲)

ヴィエニアフスキ 24歳の時の作品。妻となるイザベラIsabellaへ献呈。
イザベラの両親は二人の結婚を最初反対したが、この曲を聴いて感銘を
受け、結婚を受け入れたという。(1860年、25歳で結婚。)

オーケストラ伴奏が原曲。ピアノ伴奏版も大変美しい。ヴィエニアフスキの
作品では異色の作風である。


Violin: Leonid Kogan (ロシア 1924-82)
Recoding: 1952

ヴァイオリンとピアノで巡るポーランド音楽

on2009.jpg


八ヶ岳高原音楽堂「四季の音楽会」2010
ショパン生誕200年~ヴァイオリンとピアノで巡るポーランド音楽

ピアノ:吉岡裕子/ヴァイオリン:秋葉美果


~主な曲目~

【春】ポーランドの魂~マズルカ&ポロネーズ

ヴィエニアフスキ:華麗なポロネーズ、モスクワの思い出
ショパン:マズルカ、英雄ポロネーズ



【夏】「若きポーランド」~知られざるポーランド音楽の巨匠たち

シマノフスキ:神話
ショパン:別れの曲(ブランガ編)
ショパン:幻想即興曲、バラード



【秋】「雨だれ」の前奏曲~現代ポーランド音楽

パデレフスキ:ヴァイオリン・ソナタ
バツェヴェチ:3つの舞曲
ショパン:24の前奏曲より「雨だれ」



_______________________________

上記に挙げた作曲家のほかにもポーランドの優れた作曲家の作品を取り上
げます。
プログラム全曲は決まり次第アップします。

秋葉美果さんはポーランド、ワルシャワに留学されており、ポーランドの
舞曲のもつ独特の洗練されたリズム感を透明感あふれる音色と繊細な感性
で見事に演奏される。ポーランド音楽の素晴しさを伝えることのできる
数少ない大変魅力的なヴァイオリニスト。

(写真:八ヶ岳高原音楽堂にて)


ポーランド音楽~ヴァイオリン&ピアノ


 ポーランド音楽=ショパンの音楽とまで言われるように、ショパンは19世紀前半のポーランド音楽の創造がいかに高い水準に到達したかを十分に証明出来るほど偉大である。
 ショパンの死後19世紀後半にはヴァイオリン曲がピアノ曲とともに決定的優位を占めた。まず抜きん出たのが世界的名声をもつ大ヴァイオリニストのヴィエニアフスキ。彼は既に伝統をもっているポーランドの名演奏の歴史の次の段階を代表する業績を成し遂げた。
 ポーランド音楽史上ロマン主義からモダニズムへの発展の時期はショパンの作品に始まり、シマノフスキの活動で終わりを告げるといわれる。シマノフスキの思想の基本はポーランドのもっとも永続的な芸術的伝統を原点とする現代的な民俗芸術、即ちショパンの音楽だったが、シマノフスキはさらに不滅の価値をもつ作品をポーランド音楽の財産に加えた。「若きポーランド」として知られるグループの芸術運動はシマノフスキの音楽を全ヨーロッパに広めることに貢献する。グループにはピアニストのルービンシュタイン、ヴァイオリニストのコハンスキがいる。その後の現代ポーランド音楽界ではまず女流ヴァイオリニスト、作曲家であったバチェビチが活発な活動を展開した。
 バツェヴィチは2009年に生誕100年だったことからその音楽が見直され、新たなレコーディングも行なわれた。
 ピアニスト、作曲家、またショパンの楽譜校訂者として有名であり2010年に生誕150年を迎えるパデレフスキは2つの世界大戦によって音楽家としての活動を阻まれてポーランド独立のために政治家となり、ポーランド首相にもなった。
 ルトスワフスキは亡くなってからまだ15、6年ほどしか経たない作曲家、指揮者で、最近ではポーランドのピアニスト、ツィメルマン(ショパンコンクール優勝者)に捧げられたピアノ協奏曲がツィメルマンにより初演され話題を呼んだ。
 ポーランドの人々は今でもマズルカやポロネーズの舞曲の伝統と親しみつつショパンの存在を誇りに思っており、ショパンに関しては現在も入念な研究が続けられている。2010年はピアニストの登竜門といわれる国際的なショパン・コンクール開催の年でもある。ヴァイオリンではポーランドのヴァイオリニスト、ヴィエニアフスキ生誕100年を記念して始められたヴィエニアフスキ国際ヴァイオリンコンクールがあり、次回開催は2011年。第1回のコンクールでは世界的ヴァイオリニストであるダヴィッド・オイストラフが優勝している。このように歴史あるポーランドの知られざる音楽をピアノとヴァイオリンの両側面から迫ってみたいと思う。

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