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惑星の音階 その2:シサスク編

シサスクの作品の中で、宇宙に関するタイトルがつけられているのは
主に器楽曲です。ピアノ曲以外では、

クラリネット協奏曲:食変光星(1991)
フルートとギターのための「ヘール・ボップ彗星」 (1999)
マンドリン・オーケストラのための「百武彗星」(1996)
ヴァイオリン協奏曲 第1番「ペルセウス座」 (1998)
フルート協奏曲「しし座~流星群の観察をもとに」 (2001)
ヴァイオリン、ピアノ、ヴィブラフォンのための「池谷・張彗星」 (2002)

などがあります。

シサスクの作品でもっとも曲数が多いのは、実は、合唱曲。
ヨーロッパの伝統的な宗教音楽、グレゴリオ聖歌、ルター派教会の賛美歌、
中世のポリフォニー音楽に影響され、多くの合唱曲を書いています。
その中で、最初の大作といえるのは

「グローリア・パトリ Gloria Patri」Op.17

「銀河巡礼~北半球の星空」初演の翌年、1988年に完成されました。
宗教的なタイトル(Gloria Patri=父なる主に栄光あれ)が付けられています
が、その音楽には彼ならではの、宇宙的な要素が含まれています。

Gloria Patri が完成した前年の1987年、シサスクは、惑星の動きの分析から
【ド# – レ – ファ# – ソ# – ラ】
という5つの音から成る音列=プラネット・スケール(惑星の音階)を発見
しました。Gloria Patri では、早速、そのプラネット・スケールが使われたの
です。

この音列はちょっと並べ替えて【ファ# – ソ# – ラ – ド# – レ 】とすると、
日本の五音音階と完全一致します。シサスクはもちろん、そのことを知って
いて、エストニアで彼に会った時は、私に日本民謡っぽい即興の歌を「君は
よく知っているよね!」と上機嫌で歌ってくれました(笑)
上記に挙げた彼の器楽曲の中に、日本人が発見した彗星の曲が2つもあるのも、
プラネット・スケールの発見が少なからず関係しているのではないでしょうか。


難しい話は置いておいて、実際に曲を聴いてみると、日本民謡で聴いたことが
あるような節回し。「アレル~ヤ~♪」が日本的なのは、我々日本人としては
やや戸惑いますが・・ここでは、日本の歌ではなく、惑星の歌。

聴いてみてください!
心が鎮まっていきます。





「グローリア・パトリ Gloria Patri」(全24曲)より 第1曲





「グローリア・パトリ Gloria Patri」より 第5曲





惑星の音階 その1:ケプラー編

ガリレオ・ガリレイ(1564-1642)は近代天文学の父といわれるが、
同時代に生きた天文学者に、ヨハネス・ケプラーという人がいる。

Kepler.pngケプラー(1571-1630)




近代より前の時代は、【太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星】の7つが
惑星と呼ばれる天体だった。地球は惑星ではなく、宇宙の中心とされていた。

ケプラーは「太陽が惑星に力を及ぼし、それが惑星を動かしている」と考え、
ガリレオが発見した木星の衛星もこの法則に従っていることを確かめた。

太陽と月は除かれ、地球を加えた【水星、金星、地球、火星、木星、土星】の
6つが惑星とされた。(現在の太陽系は、これに天王星、海王星を加えた8惑星
だが、当時は、肉眼で観察出来る惑星だけだった。)

ケプラーは更に、「惑星は太陽を中心に、楕(だ)円軌道上を動く」ことを
発見した。(ガリレオは楕円軌道ではなく、円軌道だと主張していた。)
どうして楕円軌道と言えるのか・・それを説明するために、ケプラーはなんと、
音楽のハーモニーを持ち出してきた。

惑星が近日点(太陽にもっとも近い位置)と遠日点(太陽からもっとも遠い位置)
とにあるときの移動角度の比を計算して、その比率を音程の開きであらわした。
そうすると、惑星はそれぞれ固有の音域を持っていることがわかり、実際には
グリッサンドのようにスライドする音階が鳴り響くと想像できるというのである。
(ジョスリン・ゴドウィン著「星界の音楽」参照)



このことを知ったとき、6つの惑星の音階が同時に鳴り響いたら、どうなるだろう
などと考え、あれこれ調べていたら、面白いものが見つかりました。
同時に鳴り響かせるのを実践している人がいたのです!
(予想したより、ちょっと怖い響きです)

Saturnus: 土星
Jupiter: 木星
Marsfere: 火星
Terra: 地球
Venus: 金星
Mercurius: 水星

(ラテン語表記)







もうひとつ、イタリア語による解説ですが、見ていてわかりやすい映像を
見つけました。(L'Armonia delle Sfere =天球のハーモニー)

「天球の音楽」という考えを言い始めたのは、古代ギリシャのピタゴラスで、
それは、「それぞれの惑星(当時は、太陽と月を含む7天体+恒星)は、回転
しながら固有の音を発し、弦のフレットに比較しうるような間隔でならんで
いる」というものでした。






シサスク氏は以前、私が「南半球の星空」を演奏する際に、次のような
メッセージをくださったことがあります。


「あなた方がこのコンサートでお聴きになる音楽は、何百万年もの昔にその
起源を持つものです。私は、それをあなた方にも聴けるようにしただけです。
こうした音楽を聴き、また聴けるようにする、という能力も何百万年もの昔
からあったものです。私は、ただそれらを結びつけただけなのです。ユウコ
はもちろん何百万歳というわけではありませんが、彼女は我々とあなた方を
引き合わせてくれました。もっと空を見上げ、そして耳を澄ましてください。
そうすれば、星空全てを音楽に書き表したいという私の願いがわかって頂け
ることでしょう」


彼も、惑星が創り出すハーモニーを人間にも聴けるように・・と惑星の音階
(プラネット・スケール)を発見しました。1987年、「銀河巡礼~北半球の
星空」初演の年のことでした。
その音階は、偶然にも日本の五音音階と完全一致するものでした。
惑星の数もケプラーのころとは違っているし、めざましい宇宙科学の進歩も
あっての計算から生まれてきた音階であり、天球のハーモニーなのですね。




もう一枚の「銀河巡礼」CD

Tatiana Smelova

「銀河巡礼~北半球の星空」のCDがもう一枚あります。
大分前からそのことを知っていたのですが、ようやっと取り寄せました。

演奏は、タチアナ・スメロヴァ Tatiana Smelova さん。

CDの解説にはなぜか演奏者の紹介がなく・・。ほかで調べました。

スメロヴァさんは、モスクワ近郊に生まれたピアニストで、興味深いことに、
彼女はエストニア語に魅了され、3ヶ月でエストニア語を勉強し、
なんと!たったの9歳で親元を離れて、エストニアのタリン国立音楽院に入学
したとのこと。

このCDのライナーノートには、ウルマス・シサスクの子供時代について、
初めて知る事柄が書かれてました。以下に英訳を要約してみます。
「銀河巡礼~北半球の星空」はシサスク20~27歳の時の作品なので、
若いシサスクについて知ることは、大変興味深いです。


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彼の父は木こりだった。豊かな自然に囲まれた住居で、ウルマスは、
よくひとりで留守番をさせられていて、空想にふけったり、
ぼんやり外を眺めたりしていた。不可解な図や点などの絵を紙一杯
に描くことも多く、5歳までしゃべることができず、両親は戸惑ったと
いう。
学校に行くようになっても、ウルマスはクラスメートと交わらず、嘲笑
されても落ち着いていたとか。
成績は一番で、特に暗算に優れていた。校長は「天才児」のための学校に
入ってはどうかと両親にすすめた。(その学校に本当に入ったの
かは書かれてなくて、ハテナ。)
ウルマスは教師たちを次々驚かせる。初めてのピアノレッスンには、彼は
"Conversation with Haydn"(ハイドンとの対話?)と題されたオーケストラ
スコアを持ってきた。音符についての知識もないのに、見よう見まねで
自分でスコアを書いたという。
楽譜がうまく書けるようになると、今度は天文学と星に興味を持つように
なった。エストニアでは冬、日の長さがとても短く、その印象は「終わり
のない夜」という感じだそうだ。雪が降っておらず、霧が晴れていれば、
驚くべき美しさの天の川を見ることができる。外は寒いが、ウルマスは気に
かけない。毛布で身を包み、建物の屋上へ。学友のほとんどは既に熟睡し、
寄宿舎は静まり返って、灯りも消えている。学校関係者は彼の好きなように
させていた。普段、無口な彼に対し、彼が屋根の上で望遠鏡を組み立てたいと
言っても、誰も何も言わなかった。毛布に包まれながら物思いにふけるウル
マスだった・・。

彼の音楽は、彼の子供時代の反映である。子供時代の彼は、supernatural
(=超自然、人間離れした)といったら良いのか、驚くべき純真さであった。

             ピエール・フランシス(Pierre Francois)

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スメロヴァさんのCDでは、15曲目の「こと座」を除いた21曲の星座の曲を
まず順番に、終曲の「ペルセウス座」の後に「こと座」を、さらにそのあとに
プレアデス星団の7曲を収録しています。
そのように収録した理由については何も書かれていません。

ピアノはスタインウェイで、1998年、パリでの録音。
全体にテンポが速く、鮮やかさがあります。


smelova.jpg



宇宙飛行士、毛利 衛さん

1月4日、NHKあさイチの番組に、日本科学未来館館長で、宇宙飛行士の
毛利 衛さんが出演されていて、宇宙から見えるオーロラの映像について
語られていました。
その中で、毛利さんが
「宇宙からオーロラを見たとき、雅楽とバロック音楽が同時に聴こえて
くる感じがした」
とおっしゃったのがとても心に残りました。

ふと、シサスクの発見した「プラネットスケール」が日本音階と偶然一致
することを思い起こし、毛利さんが「雅楽」とおっしゃったことが気になり
ました。そして・・

毛利さんにシサスクの音楽を聴いて頂けないだろうか・・

と、とんでもないことを思いついてしまった私は、あさイチの番組の感想
や、以前に日本科学未来館を訪れて、毛利さんの素晴らしい宇宙写真に
感銘を受けたことなどを書き記し、日本科学未来館館長さん=毛利さん宛
に私のCDをお送りしてしまいました。

それから1週間しかたっていない一昨日、思いがけずも毛利さんからお返事が!
すぐに聴いてくださったとのことで、次のような心温まるお言葉をいただき
ました。

「まさに澄み切った星空の輝きを表すような美しいピアノの音色に一気に引き
込まれました。次は、一人孤独になって、星空の下、ゆっくりと拝聴させて
頂きたいと存じます。」


本物の宇宙を見て、体験している毛利さんに、シサスクの音楽が届いた・・
なんとも言葉に表すことのできない感動を覚えました。

このことをシサスク氏にもなんとかして早く伝えなければ! と準備して
います。


このことをここに掲載することについて、少しためらっていましたが
ずっと昔から尊敬している毛利さんに、改めて深く敬意を表しつつ、
この素晴らしい出来事を、みなさんにもお知らせしたいと思いました。

最後に、日本科学未来館の主催で2006年12月に開催されたイヴェントに
「毛利衛と宇宙を聴く~円い音、渦の音」という大変興味深いコンサート
があったことをご紹介します。

→ こちら

mouri_m_concert.jpg


このコンサートのタイトルで検索をかけると、多くの方の感想文もヒット
します。当時、話題になったことがわかります。


宇宙では音は聞こえないはずですが、毛利さんにもシサスクにも聞こえて
いる・・音は、音楽は、どのように生まれるのか・・
今一度、思いを深くしてみようと思います。





エステル・マギさん 90歳

今日、1月10日はエストニアの女流作曲家エステル・マギの90歳の誕生日。
素敵な写真を発見してしまいました!

ester_magi_raamat.jpg

昨年、私はマギのピアノ作品から「ラップランドのヨイク」と「いにしえの
カンネル」の2曲を本邦初演する機会をいただきました。

マギのその2つの代表作は、エストニアのピアニストによるCDに収められて
いて、ずいぶん前から、弾いてみたいな~と思っていた曲でした。
実際に弾いてみて、いっそう好きになりました。その音楽からは
女性らしさというより、過去の歴史、北国の厳しい自然と向き合いながら、
強く生きて行く中で培われてきた、マギの哲学のようなもの、人間の
大きさを感じます。
でも女性だから・・同じ女性としても惹かれ、尊敬します。

エストニアのピアノ音楽は、シサスクの音楽ばかりではありません。
私の愛聴盤を紹介します。

lassmann.jpg estonianpiano.jpg magi_cd.jpg

1. Estonian Piano Music/ ペープ・ラッスマン Peep Lassmann (piano)
2. エストニアのピアノ音楽(日本語版)/ラウリ・ヴァインマー(ピアノ)
3. Ester Mägi: Musical Portrait → amazon (mp3 ダウンロード可能)

 
News!!
マギの90歳をお祝いするコンサートがエストニアで、1月13日に
開かれるようです。

ESTER MÄGI 90 (Estonia kontserdisaal)

「いにしえのカンネル Vana Kannel 」も演奏されるよう。
ピアニストは、上記のCDの演奏者でもあるペープ・ラッスマンさん!
あ~聴きに行けたらな~~マギさんにも会えるのに!!!




「銀河巡礼」の世界初演

「銀河巡礼~北半球の星空」の世界初演は、1987年10月、エストニアのヤネダ
にて、作曲者シサスク氏自身のピアノとミック・サルヴ Mikk Sarv 氏の語りに
よって行われました。「銀河巡礼」は天体の動きについて語る物語と関連をもた
せて演奏するべきだと考えたシサスク氏は、民俗学者のミック・サルヴ氏に助け
を求め、サルヴ氏が素晴らしい物語を完成させ、初演の日を迎えたのでした。
(物語全文は楽譜に書かれています。私のCDにはその要約を3ページにわたって
掲載しています。)


世界初レコーディングは、ピアニスト、ラウリ・ヴァインマー Lauri Väinmaa 氏
によって行われました。ヴァインマー氏は、「銀河巡礼」の第1集(北半球の星空)
のみならず、第2集(南半球の星空 Op.52)の世界初レコーディングも成し遂げて
います。
「北半球の星空」世界初演後は、タリン、タルトゥ、パルヌをはじめ、エストニア
国内各地、リトアニアなどでも引き続きコンサートが開催され、そのピアノ演奏
にはヴァインマー氏も活躍しています。彼はシサスク氏が最も信頼を寄せるピアニ
ストであり、その後も現在に至るまで、数多くの彼のピアノ曲を初演し続けてい
るのです。

またヴァインマー氏は、2000年に初来日し、「銀河巡礼~北半球の星空」全曲を
日本初演しています。
実はその数ヶ月前に、私は「銀河巡礼~北半球の星空」のCD(ヴァインマー氏の
演奏/日本語版)を入手、彼が来日すると知って、武蔵野市民会館に駆けつけたの
ですが・・
満席で、会場に入れてもらえず・・大変悲しい思いをしました。。



 ラウリ・ヴァインマー氏



日本人として「銀河巡礼~北半球の星空」を初演した方は、舘野 泉さんです。
紀尾井ホールで、2001年のことでした。全国各地を3ヶ月近い期間の公演日程で
巡られる「演奏生活40周年記念」リサイタルシリーズの3種類のプログラム
のうち、一つが《星にとどく樹~シサスク「銀河巡礼」》という素敵なタイトルで、
「北半球の星空」全曲と、その後にシューベルトのピアノ・ソナタ D960
を弾かれるというプログラムでした。このときの感動はいまも忘れることは
ありません。


「南半球の星空」の日本初演は、2005年、エストニアン・ミュージック・プロ
ジェクト=EMP(秋場敬浩&吉岡裕子&たかぎひろみちさんの語り)により、
東京オペラシティリサイタルホールにて行いました。

また「北半球の星空」の語りつき(世界初演の日本語版)の全曲演奏会は、
2008年に同じくEMPにより、ルーテル市ヶ谷センターにて開催しています。




~ヴァインマー氏の世界初レコーディングの数々より、「銀河巡礼」のジャケット~

starry_1a.jpg starry_1b.jpg

左から
1. 銀河巡礼~北半球の星空 Op.10(日本語版):廃盤。mp3ダウンロード可能 → i Tunes
2. 銀河巡礼~北半球の星空 Op.10:廃盤の模様
3. 銀河巡礼~南半球の星空 Op.52:外国のamazonなどでは若干入手可能。


ほとんど廃盤になってしまっているのが大変残念です。



ポプリ・コンサート Vol.34

2012年、ポプリ・コンサート(発表会)の日程と場所が決定しました。


日時:7月16日(月・祝)14:00開演
場所:スペースDo(新大久保)




2010年4月に開催した場所です。
昨年3月に開催したスイングホール(武蔵境)は、抽選に
行きましたが、取ることができませんでした。

卒業生の方にも近々お知らせ致します。








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