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スパイラルについての覚書(3)銀河の衝突

今日は、シサスクの「スパイラル・シンフォニー」より

 3. かみのけ座M64銀河「眠れる美女―たえまぬスパイラル」
   M64, 'Sleeping Beauty', 'Restless Spirals'

について。

M64 は「黒眼銀河」とも呼ばれ、メシエ天体の中では M77 に次いで
二番目に大きい銀河。地球から1700万光年離れている。

シサスクはこの銀河(曲名)に 'Sleeping Beauty', 'Restless Spirals'
とサブタイトルを付けているが、これをどう訳すかはなかなか難しい。。

かみのけ座の領域にあること、黒眼銀河 Black Eye galaxy という
別名をもつことは、このサブタイトルに反映されたかもしれない。
また、M64の美しさは “眠れる(森の)美女” と喩えたいけれども、
実際は休むことなく(=Restless)進化し続けていることを伝えた
かったのではないか。



M64「黒眼銀河」の画像Hubble Site Newscenter


このM64「黒目銀河」は、10億年以上前に、性質の全く異なる二つの
銀河が衝突して一つになることで、出来上がったそうだ。
二つの渦巻銀河は回転が逆。つまり一つは時計回り、もう一つは反時計
回りだったという。
しかし、どうしてそんなことがわかるのか?

1990年代になって、銀河の外側のガスが、内側の星やガスとは
逆方向に回転していることが発見されたのである。

ピアノ曲集「スパイラル・シンフォニー」が完成したのは1998年なので、
シサスク氏もこうした大発見に心躍らせ、筆が進んだに違いない。



銀河には前回のブログでご紹介した「子持ち銀河」のように、仲良く共存
するものもあれば、衝突や吸収(“銀河の共食い”)によって一つになり、
大型化することもある。


次の画像は衝突の三段階(だんだん一つになる様子)を示している。

1)衝突、合体しつつある銀河:NGC 2207 と IC 2163
  (おおいぬ座/8000万光年)


画像:HUBBLE-Images



2) 融合しつつある銀河:マウス銀河(IC 819/20)
 (かみのけ座/2億9000万光年)


画像:Astronomy Picture of the Day



3) 融合が進んだ段階にある銀河:NGC 520
  (うお座/9000万光年)


画像:Hubble Site Newscenter



M64「黒眼銀河」はこれらより更に進んだ段階である。
元の二つの銀河の融合後、新たに吸収された小さな銀河たちもあって、
それらはもはや原型を留めていないし、今では新しい星も活発に生成
されている。

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銀河の進化の課程がここまでわかってきているのには、ただただ驚く
ばかり。
シサスク氏が第2曲に「子持ち銀河」、第3曲に「黒眼銀河」と並べた
ことにも納得です。
1億600万光年のNGC2276銀河を第1曲に、第2曲は2100万光年、
第3曲は1700万光年・・と地球に近づいています。
さて、第4曲以降は?


(画像はクリックすると拡大します。)




スパイラルについての覚書(2)銀河のカタログ

星座を知ることから始まって、肉眼で見える「アンドロメダ銀河」、
「プレアデス星団」、双眼鏡で見える「オリオン大星雲」、そして
壮大な天の川に出会ってしまったりすると・・星空や宇宙への興味は
きりがなくなってくる。

銀河、星団、星雲はカタログにまとめらている。
星座の数は全部で88で、カタログにする必要もない(但し、星座の
領域は星や銀河などの位置を示すには重要な役割を果たす)が、銀河
や星団、星雲となると、現在の集録数、合わせてなんと8000近くにも
及ぶ。

最も古いカタログは「メシエカタログ」(1781〜84)で、フランスの
天文学者メシエ (1730-1817)が作成、観測された天体は、メシエの
頭文字をとって、M1、M2・・と番号が付けられ、M110まである。

約100年後の1888年、デンマーク生まれのアイルランドの天文学者
ドライヤー(1852-1926)は、7840天体を集録した「ニュー・ジェ
ネラル・カタログ」(略してNGC)を発表。このカタログでは、NGC1、
NGC2・・と番号がつけられている。7840天体には当然、「メシエカタ
ログ」(Mナンバー)の天体も含まれるが、MとNGCで重複する天体は
今でも、Mナンバーの方で親しまれているようだ。

そのほか、NGCのカタログのあとに追加されたインデックス・カタログ
(略してIC)などがある。

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シサスクの「スパイラル・シンフォニー」には以下のM天体、NGC天体
が取り上げられている。

NGC2276(前回のブログで紹介済み)
M51(子持ち銀河)
M64(黒眼銀河)
NGC1365(ろ座銀河団に属する銀河)
M66(しし座銀河群に属する銀河)
M81(ボーデの銀河)
M101(回転花火銀河)

_________________________________

今日は「スパイラル・シンフォニー」Op.68 第2曲について。

2. りょうけん座 M51銀河「凝固した二重スパイラル」
   M51, 'Coagulating Double Spirals'

m 51
画像:Glen Youman's Astrophotos



りょうけん座にあるM51は「子持ち銀河」とも呼ばれる。
大きい方(親銀河)は渦巻銀河で、小さい方(伴銀河)は楕円に近い
不規則銀河という。伴銀河は親銀河の周囲を公転している。
ニュー・ジェネラル・カタログでは大きい方をNGC 5194、小さい方を
NGC 5195としている。
この銀河への距離は、2100万光年、明るく、双眼鏡でも観測でき、
アマチュア天文家には人気があるとか。

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私は、2003年に “メシエ天体フィールドマップ” なる付録に惹かれて
天文誌「星ナビ」2003年4月号を買ったことがあり、そういえば!と
思い出して、久しぶりに本棚から引っ張り出しました。雑誌本体には
M天体110全カタログが写真付きで特集されていて、その神秘的な美し
さは、眺めているだけで飽きることはありません。

これらを18世紀(モーツァルト存命中とぴったり重なる頃!)に、望
遠鏡を覗いて、一つずつ探し出したなんて、メシエはどれほどの忍耐力
があったのでしょうか。・・でもバッハのBWV作品番号が1000を越え
ているのに比べたら・・?  などとも考えてみたり・・。



スパイラルについての覚書(1)銀河の種類

シサスクの4手連弾のためのピアノ作品「スパイラル・シンフォニー」
を弾くにあたり、スパイラル=渦巻銀河とは何か、自分自身の勉強のため
覚書きとして何度かに分けて書いておこうと思います。

___________________________________

私たちが住む地球は、銀河系(天の川銀河ともいう。天の川とは、地球から
見た銀河の姿。)の端の方にある。一つの銀河には太陽のような星(太陽は
恒星です。)がおよそ1000億個も集まっているといわれ、そうした銀河は
宇宙には無数にある。

次の図は「ハッブル音叉図」(音叉のような形状の図だから)で、エドウィン・
ハッブルによる銀河の分類図である。




銀河の形状は次のように分類される。

1)楕円銀河
   E0はまんまる、E2〜E7にかけて平らになる。

2)バルジ(銀河の中心部)を貫く明るい棒を持つ「棒渦巻銀河」(SB)
   SBa、SBb、SBc と渦の巻き込み具合とバルジの大きさにより分類。

3)棒を持たない「渦巻銀河」(S)
   Sa、Sb、Sc と渦の巻き込み具合とバルジの大きさにより分類。

4)レンズ銀河 (S0)
   楕円銀河と棒渦巻・渦巻銀河の間のタイプの銀河で、渦巻の腕を
   持たない。

5)不規則銀河
   上記1)〜4)に属さない色々な形の銀河

___________________________________

基本を押さえた上で、シサスクの作品に登場する銀河について
早速見てみましょう。
今日は1曲目の銀河について。

『スパイラル・シンフォニー(渦巻銀河交響曲)』 Op.68
Cycle of piano pieces “Spiral Symphony”, Op. 68

 1. ケフェウス座NGC2276銀河「織り成されたスパイラル」
   NGC 2276, 'Interwoven Spirals'

ngc 2276
画像:Glen Youman's Astorophotos

中央にある緩やかに渦を巻く銀河が、NGC2276 で、渦巻銀河。
ケフェウス座に位置し、こぐま座のポラリス(北極星)の近くにある。
地球からの距離は1億600万光年。

渦巻の腕が風になびいているようで、色合いは優しく繊細。
ケフェウス座という星座もこの銀河も一般には馴染みが薄いようですが、
天体写真家には人気なのだそう。シサスク氏の天文学知識は相当なもの。
これが取り上げられるのはさすがかも。

NGC2276銀河がこの曲集の第1曲に位置づけられる理由について、もう
少し考えてみた。

NGC2276 が全9曲中の銀河の中で、地球から最も遠い銀河だから、では
ないだろうか。


___________________________________

次回は、銀河の番号のこと、番号の前に付けられている NGC や M
の意味についても書きたいと思います。



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「エストニアの作曲家たち」の執筆は、エストニアン・ミュージック・
プロジェクト(EMP)で共に活動している秋場敬浩さんによるもので、
重要な作曲家をはじめ、知られざる作曲家たちの主な作品を歴史的な
歩みとともに知ることができる素晴らしい内容となっています。

私は「ウルマス・シサスクとの出会い」と題して、短いコラムを執筆
しました。

以前、この本のシリーズ(エリア・スタディーズ)の
「アルメニアを知るための65章」
の中で “ババジャニヤンを弾いて” というコラムを書かせて頂いたこと
があります。アルメニアに加えて、今回待望のエストニアの本がこうして
発刊となり、偶然の出会いから始まった2つの国との縁をますます大切
にしたいと思います。

編著者の小森宏美さんは日本における数少ないエストニアの研究者です。
私のCD「ウルマス・シサスク:銀河巡礼〜北半球の星空」完成に際し、
シサスク氏が送ってくれた手紙のエストニア語を翻訳してくださったのは
小森さんです。
小森さんもエストニアとの関わりは、たまたま首都タリンを訪れたという
運命的な出会いから始まったとのことです。







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