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スパイラルについての覚書(8)宇宙の大規模構造

この覚書も最終回になりました。自分のために書いているような拙い
連載におつきあい頂き、ありがとうございます。


「スパイラル・シンフォニー」の終曲(第9曲)

9. スパイラルのフィナーレ
   'The Spiral-Shaped Finale'


この曲のイメージに、とっておきの画像を一枚!
色彩や形のなんと豊かなことでしょう。宇宙には音はないけれど、
音色に相当する種類の色数は少なくともあるのでは・・?



画像:Nasa/Hubble Space Telescope


これは米航空宇宙局 NASAのハッブル宇宙望遠鏡が探査し、撮影した
ハッブル・エクストリーム・ディープ・フィールド Hubble eXtreme
Deep Field (XDF) と名付けられた超深宇宙領域の画像である。
2012年9月25日に公開となったこの画像は、ろ座の一角を10年以上に
わたって撮影した物を合成したもので、総露光時間は200万秒(約23日)
に及ぶという。この画像には、渦巻銀河から、銀河衝突の残骸である赤色
の巨大銀河まで、約5500個の銀河が写っている。


シサスク氏が「スパイラル・シンフォニー」を完成させたのは1998年
この3年ほど前から、NASAの天文学チームは、ハッブル宇宙望遠鏡
により宇宙の深部の観測を続けてきた。シサスク氏もきっとその観測
結果を注視してきたことであろう。

というわけで、簡単にこれまでのNASAの観測の歩みをまとめてみた。
(「・・フィールド」=探査画像)


1995年
ハッブル・ディープ・フィールド HDF
おおぐま座の一角にある3000個の銀河が撮影された。
その中で最も遠いものは120億光年の銀河。

1998年
ハッブル・ディープ・フィールド・サウス HDF-S
きょしちょう座の一角が撮影された。
この観測によって、南半球の銀河も北半球と極めて似ている
ことがわかり、宇宙は大きな規模で見ると均一であるとする
説が有力になった。

2003-4年
ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド HUDF
ろ座の一角が撮影された。
それまでで最も暗い天体まで写っている天体写真となった。

2006年-12年
ハッブル・エクストリーム・ディープ・フィールド XDF
現在までに撮影された中で、最も深い宇宙の画像である(ろ座の方向)。
132億年前に誕生した銀河を含め、5500個の銀河がとらえられて
いる。(これが上の “とっておきの” 一枚)

2012年12月12日
観測史上最古の銀河を発見
ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド(HUDF)を調査
した結果、原始的銀河が新たに7つも発見され、このうち1つは
133億年前に誕生した観測史上最古の銀河とみられる。つまり、
宇宙誕生の時とされる137億年前のビッグバンにかなり近づいた
ことになり、最初の銀河がいつどのように形成されたのか、今
まさに解明されつつある。


ハッブル・ディープ・フィールドの三次元映像を見つけました
のでご覧下さい。果てしない美しさに惹き込まれます。






宇宙空間は、石鹸を泡立てたときにできる、幾重にも積み重なっ
た泡のような構造であるとか。
泡の膜面に銀河が存在し、泡の中の空洞たる超空洞(ボイド)には
銀河がほとんど存在しないという。

泡の膜面に分布する銀河群や銀河団が 1億年光年以上の広がりを
持つならば、その膜面は「超銀河団」となり、「超銀河団」の膜面
が幾重にも連なると、巨大壁「グレートウォール」となる。
「グレートウォール」は地球から約2億光年と推測されているが、
その大きさはまだ分かっていない。

宇宙の中で銀河の分布が示す、こうした巨大な泡のような構造を
「宇宙の大規模構造」という。

_______________________________


やれやれ・・w

ここまで書いて、なんだか頭がクラクラしてきました。
宇宙が石けんの泡みたいだなんて、わかりやすいような・・余計
わからなくなったような・・。

でも、シサスク氏の「 スパイラルのフィナーレ」は、全9曲中、
最も親しみやすく、誰もが宇宙をイメージできるような曲想です。

曲のタイトルを「スパイラル・シンフォニー」と “交響曲” にした
のは、「宇宙の大規模構造」large‐scale structure of the cosmos
を意識してのことでしょうか。
この宇宙には素晴らしい秩序があるにちがいなく、でもその謎を解く
には、きっと自由な発想や空想力も必要でしょう。
音楽における「交響曲」というジャンルもある程度の定義(秩序)が
あり、多楽章からなる大規模な楽曲。でも近現代では例外的なものも
多いですね。

シサスク氏のこの作品は、ピアノ曲でシンフォニー。例外なんてもん
ではないというか、楽器の扱い方も普通でないところがあり、謎解き
どころか、謎が深まってしまうかもしれません・・(笑)



連載最終回はちょっと難しくなりました(難しいことを平易に書くの
は難しい!)
さあ、演奏にどう生かし、曲に没入するか・・これからが楽しみです。


さいごに・・

これを書いている間に、大きな夢が実現の運びとなりました。
今夏、8月2日に、エストニアのエイヴェレ Eivere にて、シサスク氏と
「銀河巡礼」をコラボ(北半球、南半球からそれぞれ後半を演奏)する
ことが決まりました。
アンコールには、「スパイラルのフィナーレ」を彼と連弾することに
なる予定です。
詳しくは近々発表します。


次なる連載は、フェデリコ・モンポウの「歌と踊り」ついて、の予定です。




スパイラルについての覚書(7)銀河の鎖

「スパイラル・シンフォニー」第8曲は

8. 遥かなるおとめ座銀河団「スパイラルのパレード」
   'The Distant Group Of Galaxies In The Constellation Of Virgo'
    - 'The Parade Of The Spirals'


ということで、「おとめ座銀河団」をじっくり見てみたい。

銀河というのは、互いの重力に引き合って2つ以上の「群」(銀河群)
が出来、その数が増えていって50を越え、直径1,000万光年もの広がりに
なれば「団」(銀河団)と呼ばれるようになり、これらが更に引き合い
集まって1億光年以上の広がりになれば、「超」が付いて「超銀河団」に
なる。

主な「銀河団」は次の通り。構成銀河数の多い順に並べてみる。

1. おとめ座銀河団(2000個〜2500個/5900万光年)
2. かみのけ座銀河団(1000個以上/3.21億光年)
3. うみへび座銀河団(157個/1.58億光年)


「おとめ座銀河団」は最も多くの銀河を有する銀河団であり、渦巻銀河と
楕円銀河が不均一に混ざった構成になっている。
そしてなおかつ、私たちの地球がある天の川銀河に最も近い銀河団でもある。



おとめ座銀河団の画像:European Southern Observatory


画像の中心よりやや右上に、「マルカリアンの鎖」Markarian's Chain
と呼ばれる緩やかな弧を描く銀河の列がある。
拡大した別の画像を見てみよう。


マルカリアンの鎖の画像:Wikipedia



ここは「おとめ座銀河団」の中心部(ダブルクリックで拡大して下さい)


出典:Hawaiian Astronomical Society

非常に明るく見える M84、M86、M87 はいずれもメシエによって
1781年に発見されている。

M84(NGC4374)
レンズ状銀河
6000万光年
中心に太陽の3億倍もの巨大ブラックホールがあると推測される

M86(NGC4406)
レンズ状銀河
5500万光年
M84に比べてやや大きい

M87(NGC4486)
直径12万光年もの大きさを持つ巨大な楕円銀河
6000万光年
強い電波を放射している
中心に太陽の約30億倍の質量を持つブラックホールが存在する


______________________________

巨大なブラックホールの存在により、銀河どうしが引き合って
生まれた “銀河の鎖”。

なんと美しいのでしょう。

シサスク氏はこの鎖のことを “パレード” と呼んでいるのでは
ないでしょうか。この音もなく静かに輝くパレードを、彼は
揺らめくようなトリルの重なりで表現しています。

そういえば・・シサスク氏は9月9日生まれの乙女座!

おとめ座銀河団は、壮大な宇宙の深淵への入口であり、彼が最も
行きたい場所なのかもしれません。

「スパイラル・シンフォニー」いよいよ次はフィナーレです。





スパイラルについての覚書(6)巨大な銀河

春を告げる「しし座」のすぐ北には「おおぐま座」も頭を並べて
いる。 シサスクの「スパイラル・シンフォニー」ではそんな配置
を示すかのように、しし座M66銀河の第5曲に続き「おおぐま座」
の銀河の曲が2つ並ぶ。


 6. おおぐま座M81銀河「巨大スパイラル」
   M81, 'Gigantic Spirals'

 7. おおぐま座M101銀河「破線状スパイラル」
   M101, 'Spirals With Holes'   



星図:Astro Arts 星空ガイド

 
(上の星図はクリックしてご覧下さい)

おおぐま座にはM81を中心とした「M81銀河群(別名:おおぐま
座銀河君)」と M101を中心とした「M101銀河群」がある。
M81は「おおぐま座」の右耳のそばに、M101はしっぽの上部に見える。

シサスクは、M81を「巨大スパイラル」と名付けているが、 M101
も巨大で、直径を比べた場合はM101の方が大きく、質量で比べた
場合はM81の方が重い。シサスク氏はM81の質量、すなわちM81銀河
中心部の巨大なブラックホールの重力に注目していると思われる。

わかりやすく並べて比較してみよう。


M81銀河 (NGC 3031)
渦巻銀河
通称:ボーデの銀河(1774年にドイツの天文学者ボーデが発見)
距離:1,180万光年
直径:10万光年
質量:太陽の2,500億倍
所属する恒星の数:2500億個(天の川銀河より小規模)

特徴:
銀河の回転速度が計測されたことで有名で、その速度は秒速300km。
ブラックホールは天の川銀河のそれの15倍で、太陽7000万個分に
相当する質量。


M81の画像:Hubble Site-News Center



M101銀河 (NGC5457)
渦巻銀河 
通称:回転花火銀河、風車銀河、糸車銀河、Pinwheel Galaxy
距離:2700万光年
直径:17万光年(天の川銀河の約2倍)
質量:太陽の160億倍
所属する恒星の数:7,000億個~1兆個(アンドロメダ銀河を凌駕)

特徴:
渦状腕は巨大な星形成領域であり、今も爆発的に新しい星が誕生。
今後更に巨大な銀河に成長する素材を有している。
円盤は意外に薄く、奥の銀河がいくつも透けて見えている。


M101の画像:Hubble Site-News Center


______________________________________________________

天文学的数字というのは、本当にものすごい。
「巨大」とはどれほどのものか、銀河を眺めていると
考え方が変わっていきます。


スパイラルについての覚書(5)春の銀河

今日は立春。
春は名ばかり・・というけれど、夜空には一足先に春が訪れる。
冬の王者オリオンは西へと傾き、春の星座、しし座が
1等星レグルスを携えて、勇猛に駆け上がってくる。


しし座
出典:AstroArts


春の夜空には天の川が見えない時間帯が多いため、まばらな星の間
からは多くの銀河、銀河群や銀河団を観測できるという。

このしし座の領域にはメシエ(M)や NGC 銀河の群れがある。

M96を中心とする「M96銀河群」
M66を中心とする「M66銀河群」

二つを合わせて、「しし座銀河群」という。

「M66銀河群」にある M66、M65、NGC3628の3つの銀河は
ほぼ同じ距離(3000万光年辺り)に位置しているので「しし座の
三つ子銀河 Leo Triplet」とも呼ばれる。



M66銀河群(三つ子銀河)の画像:European Southern Observatory

左:NGC3628
右上:M65
右下:M66(NGC3627)

______________________________

シサスクの「スパイラル・シンフォニー」第5曲は、

5. しし座M66銀河「スパイラルのカオス」
   M66, 'The Chaos Of The Spirals'



M66の画像:European Southern Observatory


三つ子銀河の中で最大規模の M66は渦巻銀河で、その渦(腕)
は、近くにある M65 や NGC3628 の重力(引力)が影響して歪み、
非対称の形になっている。
中心部(=バルジ)は非常に発達、活発な星形成活動が行われている
という。

________________________________

シサスクがこの銀河について与えた「カオス」というタイトル。

M66がいびつな形になりながらもバルジを発達させ、放出する水素ガスや
ちりによって不可思議な模様を描き出している姿を、的確に表している
と思います。

三つ子銀河は、3つとも望遠鏡で見えるとのこと。シサスクは当然ながら
実際に見ているだろう。

「スパイラル・シンフォニー」に登場する
M51(子持ち銀河)
M64(黒目銀河)
おおぐま座のM81、M101
おとめ座銀河団

は春の銀河(=春によく見える)で、

残る
NGC2276(ケフェウス座)
NGC1365(ろ座)

は秋の銀河。

しし座の三つ子銀河には、かすかな春の訪れを実感する天体ファンも
多いとか。






スパイラルについての覚書(4)銀河の分布

 銀河は宇宙全体に分布し、重力の働きでお互いに引きつけ合うことで
群れを作る性質があり、群れの大きさにより、次のように区別されている。


銀河群:
・2〜50個ほどの銀河が集まる
・直径150万〜200万光年程度の狭い範囲で構成される

銀河団:
・50個以上〜1000個ほどの銀河が集まる
・直径1,000万光年ほどの大きな集団

____________________________

シサスクは「スパイラル・シンフォニー」の中で、第8曲の “おとめ座銀河団”
をはじめ、ろ座銀河団、しし座銀河群、おおぐま座銀河群に属する銀河を取り
上げている。


今日は「スパイラル・シンフォニー」第4曲について。


4. ろ座 NGC1365銀河「棒状スパイラルの平和」
   NGC1365, 'Peace Of The Rod-Shaped Spirals'


NGC1365 は棒渦巻銀河で、地球からは約5600万光年の距離にある。
明るい銀河が多い「ろ座(炉座)銀河団」の領域で、ひときわ目立っている。
(下図右下)


「ろ座銀河団」の画像:The Hubble Heritage Project

この「ろ座銀河団」は「おとめ座銀河団」よりはるかに小さいが、1億光年
の範囲内では「おとめ座銀河団」に次いで2番目に大きく、現在は「エリダ
ヌス銀河団」を吸収しつつある。
「ろ座」はエストニアからは見えない南半球の星座だが、NGC1365 は、
日本からはかろうじて見えるようだ。オーストラリアでは天頂付近に見えて、
その姿は強烈とか。

では、NGC1365 を拡大。


NGC1365の画像:European Southern Observatory


巨大な2つの腕が特徴的で、その腕は20万光年もの広がりがある。
NGC1365は、棒渦巻銀河の中ではもっともよく研究されており、超巨大
ブラックホールが存在していることもわかっているほか、近年は、2つの
超新星が見つかっている。

シサスクが、ろ座 NGC1365銀河を “平和” としたのはなぜだろう。
新しい生命を生み出す、とてつもない強さを秘めた銀河なのかな・・?






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